1. 一般教育目標
(1) 研修の目的
科学的根拠に基づいた皮膚科に関する基本的診療能力を修得し、全人的医療や適切なプライマリ・ケアの診療能力(態度、技能、知識)を身につける。
(2) 研修の目標
- 医療人としての基本姿勢・態度を、皮膚科研修を通して身につける。
- 患者の病歴、理学的所見(主に皮疹)を的確にとり、その病態を判断し、検査計画を立てるとともに、治療方針を決定する。
- 内科的知識を習得し、基礎疾患のある患者の管理と治療に応用できるようになる。
- 診断、治療に必要な特殊検査を習熟する。
- 皮膚外科医としての基本的な手技を理解し、自ら実施できるようにする。
- 術後管理や広範囲熱傷急性期管理の基本が的確にできるようになる。
- 尊厳な心を持って終末期医療にも対応できるようになる。
2. 目標達成のための具体的課題
(1) 経験できる診療法・検査・手技
- 基本的観察
一般理学所見のとりかた、皮疹のみかた - 基本的臨床検査(自ら実施できるか、または検査の適応の判断・結果の解釈ができる)
一般尿検査、便検査、血液型判定、交差適合試験、血算、白血球分画、 血液生化学的検査、血液免疫血清学的検査、動脈血ガス分析、薬剤感受性検査、心電図、肺機能検査、内視鏡検査、超音波検査、単純X線検査、造影X線検査、X線CT検査、MRI検査、核医学検査、真菌検査(KOH直接検鏡、真菌培養法)、細菌学的検査(グラム染色)、細胞疹(ギムザ染色)、病理組織検査(HE標本の見方) - 基本的手技
気道確保、人工呼吸、圧迫止血法、包帯法、注射(皮内、皮下、筋肉、点滴、 静脈確保)、採血法(静脈血、動脈血)、導尿法、ドレーン・チューブ類の管理、胃管の挿入と管理、局所麻酔法、創部消毒とガーゼ交換、簡単な切開・排膿、皮膚縫合法、外傷処置、熱傷処置(軽症~重症)、気管内挿管、除細動 - 基本的治療法
療養指導、薬物治療(外用療法を含む)、輸液、輸血 - 診療記録
診療録、処方箋、指導書、診療計画書、診断書、死亡診断書、紹介状、返信、インフォームドコンセント
(2) 経験できる症状、病態、疾患
- 頻度の高い症状
痒み、紅斑、丘疹、鱗屑、痂皮、膨疹、水疱 - 緊急を要する疾患・病態
アナフイラキシーショック、急性細菌感染症、急性蕁麻疹、重症熱傷、気道熱傷ウイルス感染に伴う間質性肺炎、重症薬疹、外傷、腫瘍性出血(血管腫など)
(3) 経験できる疾患、病態
- 循環器系疾患
下肢静脈瘤、血栓性静脈、閉塞性動脈硬化症、リンパ管炎、リンパ浮腫 - 呼吸器系疾患
肺炎、間質性肺炎(ウイルス感染に伴う)、呼吸不全 - 皮膚疾患
湿疹、皮膚炎群(アトピー性皮膚炎ほか)
蕁麻疹、痒疹、掻痒症
紅斑群(多形滲出性紅斑、結節性紅斑、中毒疹、薬疹など)
血管・リンパ管系疾患((1)および血管炎群)
角化異常症(遺伝性、後天性など)
炎症性角化症(乾癬、扁平苔癬など)
皮膚腫瘍(各種良性、悪性腫瘍)
肉芽腫症(サルコイドーシス、環状肉芽腫など)
膠原病と類症(SLEほか、ベーチェット病、スウィート病など)
水疱症(天疱瘡、類天疱瘡など)
色素異常症(白斑など)
母斑・母斑症(色素性母斑、血管腫、扁平母斑、レックリングハウゼン氏病など)
代謝異常症(沈着症、黄色腫、痛風結節など)
物理・科学的皮膚障害(光線皮膚炎、熱傷、凍痩、褥創など)
ウイルス感染症(風疹、麻疹、水痘、帯状疱疹、伝染性紅斑など)
細菌感染症(蜂窩織炎、丹毒、膿瘍など)
真菌感染症(白癬、カンジダ症、スポロトリコーシスほか)
性行為感染症(梅毒、毛じらみなど)
寄生虫症・動物性疾患(ダニ刺症、疥癬、顎口虫症ほか)
附属器疾患(ざ瘡、毛包炎、汗疹ほか)
粘膜疾患(口内炎、アフタ、扁平苔など)
軟部組織疾患(形成異常、皮膚萎縮症、結合織疾患など)
3. 本カリキュラムの特徴
- 皮膚科研修中、原則として上記のことを学ぶのですが全ては経験できません。経験できない分は専門書や指導医から知識として学んでいただきます。
- 経験できた疾患では、診断から治療まで一貫して学べます。
- 指導は、皮膚科専門医(皮膚科医長)および先輩医師(副医長)が行います。
- 皮膚疾患の研修を基本として、入院患者の合併症を通して内科・外科をはじめ他科疾患の診断治療についても経験していただきます。
- 検査・手術、カンファレンスの状況や受け持ち患者さんの状態によっては、勤務時間が不規則になることがあります。
- 研修医の皆さんができるだけ充実した研修を受けられるようにスタッフ一同努力いたします。