宮崎県立宮崎病院耳鼻咽喉科は、令和4年1月11日をもちまして耳鼻咽喉科・頭頸部外科に改正致しました。耳鼻咽喉科が大正11年に開設され、令和3年に100年の節目を迎えました。以前は中耳炎、副鼻腔炎、咽喉頭炎などの感染症や難聴、呼吸障害、嗅覚障害、嚥下障害などの機能障害、また異物、外傷などの救急疾患に対する治療が中心でした。近年抗生剤の進歩、分子標的薬の登場、クリニックレベルでの日帰り手術の普及により、当院で扱う急性疾患、慢性炎症性疾患は減少傾向にあります。それに対し生活習慣に伴う悪性腫瘍の増加によってがん治療を中心としたより専門性の高い、他職種連携の必要な医療が中心となりました。耳鼻咽喉科が扱う悪性腫瘍は、脳、眼、顔面皮膚を除いた頭頸部領域をさし、頭頸部がんといいます。その頭頸部がんを扱う専門的な診療科を頭頸部外科といいます。一般的に耳鼻咽喉科の呼称では、頭頸部がんを扱う診療科としてあまり一般の皆様には馴染みがないため、広く知られるように耳鼻咽喉科・頭頸部外科と標榜致しました。宮崎市内はもとより、宮崎県内の頭頸部がん治療を担うがんセンター化を目指し、頭頸部がんを中心とした診療を県民の皆様に提供してまいります。
また当院は、耳鼻咽喉科専門医2名(うち頭頸部がん専門医・指導医1名)、レジデント1名の3名で診療に従事しており、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会専門医研修施設、日本頭頸部外科学会認定頭頸部がん専門医準認定施設として、若手医師への教育機関としての役割も担っております。
頭頸部癌治療におきましては、院内各部門seemlessな連携による質の高い医療を提供するように努めています。例えば、院内消化器外科、放射線科、病理診断科、リハビリテーション科、緩和ケアチーム、栄養サポートチームの協力を得て集学的な入院治療を行い、術前術後の状態を見ながらきめ細かく治療方針の決定、治療を展開しております。
2022年12月より頭頸部癌におけるロボット支援手術を開始致しました(九州で5番目、県内初となります)。 手術侵襲の少ない、繊細かつ安全な治療が可能となり、より患者様に治療の選択肢を提供できます。
また、2023年1月より頭頸部アルミノックス治療を開始しました。手術不能な再発転移を有する頭頸部癌の患者さんに、有効な治療の選択肢が提示可能となりました。
診療日
- 手術日:毎週月曜日・水曜日・木曜日
- 外来日(新患:午前):火曜日・金曜日
- 外来日(再診:全日):火曜日・金曜日
主な対象疾患と治療
- 頭頸部がん(咽頭癌、喉頭癌、口腔癌、鼻副鼻腔癌、唾液腺癌、甲状腺癌、聴器癌、頭頸部原発不明癌):再建を用いる拡大手術、機能温存を目的とした内視鏡下経口手術、(化学)放射線治療:経静脈投与による化学放射線治療や上顎洞癌に対する選択的動注化学療法を用いた放射線治療、手術不能再発転移症例に対する姑息的化学療法(殺細胞性抗がん剤もしくは分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬)
ダヴィンチ xi を用いたロボット支援手術、頭頸部アルミノックス治療 - 頭頸部良性腫瘍手術:耳下腺腫瘍、顎下腺腫瘍などの良性腫瘍や正中頸嚢胞、側頸嚢胞などの先天性嚢胞性疾患
- ナビゲーションを用いた内視鏡下鼻副鼻腔手術:鼻副鼻腔乳頭腫や慢性副鼻腔炎、鼻茸、上顎洞真菌症
- 頸部リンパ節生検・摘出:悪性リンパ腫などの血液疾患、頸部結核、猫ひっかき病など悪性腫瘍と鑑別の必要な感染症
頭頸部がん患者初診数
- 2020年度 84名
- 2021年度 59名
頭頸部がん治療実績
2020 | 2021 | |||
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拡大再建手術 | 舌癌 | 舌半切 | 3 | 6 |
両年ND20側 | 舌亜全摘 | 2 | 1 | |
下咽頭癌 | 下咽頭喉頭全摘 | 7 | 6 | |
食道癌 | 術後気管瘻孔閉鎖術 | 1 | 0 | |
甲状腺癌 | 頸部郭清後頸皮再建 | 1 | 0 | |
14 | 13 | |||
原発手術 | 口腔癌 | 舌部分切除 | 4 | 6 |
口腔底癌摘除・植皮 | 1 | 0 | ||
中咽頭癌 | 経口的中咽頭癌摘除 | 3 | 2 | |
鼻副鼻腔癌 | 内視鏡下鼻腔腫瘍摘除 | 3 | 0 | |
喉頭癌 | 喉頭全摘 | 3 | 0 | |
喉頭部切 | 1 | 2 | ||
耳下腺癌 | 耳下腺部切 | 3 | 1 | |
耳下腺全摘 | 4 | 2 | ||
甲状腺癌 | 甲状腺葉切 | 2 | 2 | |
甲状腺全摘 | 2 | 1 | ||
聴器癌 | 外側側頭骨切除 | 1 | 1 | |
その他 | プロボックス留置 | 0 | 1 | |
再建空腸短縮 | 0 | 1 | ||
気管孔閉鎖 | 0 | 1 | ||
27 | 17 | |||
頸部郭清術 | 原発不明癌 | 3 | 4 | |
咽頭後転移 | 1 | 0 | ||
喉頭癌後発転移 | 2 | 2 | ||
口腔癌後発転移 | 2 | 4 | ||
甲状腺癌後発 | 4 | 0 | ||
食道癌気管傍転移 | 2 | 0 | ||
中咽頭癌後発転移 | 0 | 1 | ||
唾液腺癌後発転移 | 0 | 2 | ||
14 | 12 | |||
©RT 同一症例2回、術後RTを含む | ||||
放射線治療単独 | 喉頭癌 | 6 | 6 | |
下咽頭癌 | 5 | 3 | ||
中咽頭癌 | 2 | 1 | ||
耳下腺癌 | 1 | 1 | ||
鼻副鼻腔癌 | 1 | 0 | ||
聴器癌 | 1 | 0 | ||
原発不明癌 | 0 | 1 | ||
化学放射線治療 | 喉頭癌 | 6 | 2 | |
下咽頭癌 | 5 | 4 | ||
中咽頭癌 | 1 | 1 | ||
口腔癌 | 0 | 3 | ||
耳下腺癌 | 0 | 1 | ||
食道癌 | 2 | 0 | ||
原発不明癌 | 0 | 2 | ||
選択的動注化学放射線治療 | 上顎洞癌 | 5 | 2 | |
35 | 27 |