インプラント(シリコン)による乳房再建が保険適応になりました
県立宮崎病院外科 大友直樹
乳癌の手術は乳房を残し、癌の周囲をできるだけ小さく切る事が標準となって来ましたが、県立宮崎病院でも様々な理由により乳房切除術が行われる患者さんが50%程います。
そのような患者さんには、自分のお腹の筋肉や背中の筋肉を使う自家組織による乳房再建術が以前より保険適応でしたが、健康な組織に大きくメスを入れなければならなくて手術の負担も大きく、あまり普及していませんでした。そのため当院では2004年から、より簡便で負担の少ないインプラント(シリコン)による乳房再建術を開始致しました。乳癌の手術時に大胸筋下に組織拡張器(エキスパンダー)を入れ、約半年かけて注射器で水を入れて膨らました後にインプラントに入れ換えます。当時は保険適応外で、乳癌の治療とは別に総額約80万円の再建手術費用が必要で、お金の問題で乳房再建を断念する患者さんも多く、乳癌手術全体(当院の乳癌手術は年間約150例)の3%程度にとどまっていました。
長年の日本乳癌学会等による働きかけで、2013年7月より乳房再建が保険適応になると大々的に発表されましたが、ふたを開けてみるとラウンドタイプといってドッチボールを二つに割ったような真ん丸のものしか認められず、左右対称な乳房を再建するためは引き続き保険適応外で手術を行わなくてはならず、患者さんへの説明にも苦労していました。
中途半端な保険適応には混乱と批判が続出し、2014年1月8日、日本人の自然な乳房の形に近いしずく型のゲル充填人工乳房が保険適応での発売となりました。ただし、今後の乳房再建手術は日本乳房オンコプラスティックサージェリー学会が定めた「乳癌および乳腺腫瘍術後の乳房再建を目的としたゲル充填人工乳房および皮膚拡張器に関する使用基準」に沿う必要があり、今まで通りにすべての病院で自由に人工乳房での乳房再建を行うことはできなくなります。当院は2014年2月18日乳房再建用エキスパンダー実施施設として認定を受けることができ同日以降は乳房再建に公的保険を使う事ができるようになりました。ただし、いろいろな条件もありますので、乳房再建をご希望の方は主治医にご相談ください。
婦人科がん患者会紹介
宮崎病院内には、ふらっとカフェ(宮崎県がんサロン等運営支援事業)等のがん患者会があります。しかし、婦人科系はデリケートな部位なので個別に語り合える場を求める患者様の声が聴かれています。また、宮崎病院は、婦人科悪性腫瘍治療の患者様数が九州で上位10位に位置するがん治療拠点病院なので、婦人科がん患者会を開催することは、県内の多くの婦人科がん患者様が退院後も
安心して過ごされる環境を整えることにつながると考えています。患者様の思いに寄り添いながら支援できるように、平成21年度から婦人科がん患者会を充実させるための活動に取り組んでいます。
毎月第4金曜日に定期開催を開始しています(変更の可能性があります)
是非、お気軽にご参加下さい(ご予約の窓口は産婦人科外来です)
婦人科がん患者会の内容
患者様の要望が高いリンパ浮腫ケアについて、リンパ浮腫療法士が皆様の質問にお答えしています。
その他、様々な質問については、産婦人科病棟(4階東病棟)看護師と、がん相談員がお答えしています。
患者様同士の交流と意見交換の時間を多くとり、患者様主体の会となるよう心掛けています。
患者会の様子です。
会場内にかつらやケア帽子、書籍を展示し、会の前後や、途中休憩時に、がん相談員が対応しています。
平成25年度の開催状況(5~12月迄)
開催月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 10月 | 11月 | 12月 |
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参加者数 | 9名 | 8名 | 7名 | 7名 | 8名 | 5名 | 7名 |
参加された患者様の感想(一部抜粋)
- 身辺にリンパ浮腫の事を相談できるところがないので、リンパ浮腫療法士の話を聞けてよかった。
-
リンパ浮腫が数年経って出るというのが不安ですが、この会に参加して安心することができました。
まだまだ正しいマッサージができていないと思うので、会を重ねる毎に少しずつ理解できていると
思うとうれしい。 -
どうして私だけ腫れるのと思って憂鬱だった。今までしていたマッサージが少し間違っていた所も
あったので、今日勉強した事でこれからもひたすらマッサージで頑張る。 - 一人で悩まないでどんどん話していく事でとてもスッキリしました。
- 同じ病を持つ仲間と一緒にこれからも楽しく人生を送っていきたいと思います。
- 相談窓口を初めて知りました。 相談窓口を知ることができホッとしました。
- 自分が困った事が解消できそうなので今後も参加したい ・毎回楽しいので次の会が楽しみです。
今後の予定
参加された患者様の声をもとに、今回、基本的なリンパ浮腫ケアについてのDVDを
作成しました。
今後は、バージョンアップしたマッサージの実技指導や患者様の要望として高かった医師や栄養士など専門職からの話を組み込んで、患者会内容をより充実させていきたいと思っています。
病棟紹介
7階西病棟
小児科医療センター7階西病棟は、平成26年3月に病棟がリニューアルされ明るい病室になりました。病床数は40床、個室が28室、2人部屋が2室、4人部屋が2室となっています。
入院対象は0歳から15歳までの全診療科のこどもたちです。小児の急性期の入院、また手術のための短期入院から数ヶ月の長期入院のこどもたちが一緒に治療を受けています。こどもたちが検査や手術のことを、正しく理解出来るよう
丁寧な説明に努め、自ら頑張ろうと治療に臨む気持ちを支え、一日も早い回復を願っています。
私たち病棟スタッフ(医師・看護師・保育士・ナースエイド・クラーク)は入院してくるこどもたちとご家族に安心して治療を受けていただけるように、優しく心のこもった医療の提供に努めています。
8階西病棟
がん治療センター8階西病棟は、血液疾患、消化器疾患の患者さまの治療・看護を行っています。
総病床数は41床で、医師7名、看護師24名、ナースエイド6名、クラーク1名で構成されています。主に化学療法、放射線療法、内視鏡検査、骨髄移植、終末期ケアなどを行っています。
効果的な治療を受けていただくために、多職種でカンファレンスを行いながら、医師とともに質の高い専門医療を提供しています。また、抗がん剤治療をうける患者さまの感染予防のための無菌室も6室あります。
患者さまは辛い治療や処置が多いため身体的なケアに加え、心理的ケアが必要となってきます。患者さまやご家族の力を最大限に発揮でき、治療の効果や症状の緩和が得られるように、病棟スタッフは日々寄り添いながら関わらせていただいております。また、辛い治療にも前向きに頑張っていらしゃる、患者さまより私たちが、日々たくさんのことを学ばせていただいております。
診療科紹介
薬剤部
県立宮崎病院薬剤部は現在、薬剤師19名、業務
補助員9名で構成されています。
主な業務として、入院・外来処方せんの調剤、服
薬指導、注射薬の払出、抗がん剤の無菌調製、医薬
品情報の提供、臨床試験(治験)に関する事務などを行っています。
また、より安全で質の高い医療を提供するため、昨年から病棟に専任薬剤師を配置し持参薬の確認やハイリスク薬の管理などの病棟薬剤業務に取り組んでいます。
更に、患者様の不安を和らげるとともに、安全で有効にお薬を使っていただけるように、服薬指導を充実させることを心がけています。
お薬について不安なこと、わからないことは、ご遠慮なく薬剤師に声をかけて下さい。
臨床検査科
臨床検査科は現在、医師3名と28名の臨床検査技師が所属していて、生理検査部門では心電図や脳波、血圧脈波検査、心臓や腹部の超音波検査などを行います。検体検査部門では血液や尿の検査はもちろん、感染症などの細菌やウイルスの検査、輸血時の製剤とのマッチング検査、腫瘍などの組織検査や手術中の組織の悪性度を調べる検査など様々な検査を行っています。
緊急検査は休日、夜間も当直で対応しています。臨床検査技師も認定制度があり、それぞれの分野で専門性を追求するために、認定試験に挑戦し知識や技術の向上に努めています。
臨床検査科では「正確なデータをより早く」「骨身を惜しまない臨床支援」「真心のこもった患者サービス」をモットーに頑張っています。
今後も患者様に満足頂けるよう努力してまいります。
県立宮崎病院のナースマンご紹介
私たち実習ナースマンは28名
県立宮崎病院では、外来2名、手術室4名、ICU1名、3西病棟(救急)2名、5東病棟(循環器センター)2名、6西病棟(整形)3名、精神医療センター14名の男性看護師が所属しています。
数年前までは珍しがられた男性看護師も、最近ではずいぶん増えてきて、必要性の高まりと共に社会的にも認知されるようになってきました。時には強くたくましく、時には女性に負けないやさしさで日々の看護に取り組んでいます。家庭を持っている男性看護師も多く3交代・土日勤務しながらの父親も大変ですが家族・職場の理解の元、両立して頑張っています。今後も患者様に満足頂ける看護を提供できるよう努力して参ります。
これからも、頼れるナースマンをめざし日々頑張ります!ナースマン一同
エキスパートナースご紹介
精神科認定看護師(うつ病領域) 岩切 幸子
現在、精神医療センターに勤務しています。うつ病は誰でもかかる可能性のある脳の病気であり、精神的症状のほか身体的症状が現れることがあります。抑うつ状態や希死念慮のある患者さんが、安心して休養できるように関わらせていただいております。また、患者さんやそのご家族に寄り添い、生活上の困り感や生きづらさについて他職種と協働し、その人らしさを大切にしながら社会的自立への看護援助を行っていきたいと思います。
外来化学療法室 がん化学療法看護認定看護師 津曲 竜一
がん化学療法治療は、新しい抗がん薬・分子標的薬とめざましい進歩を遂げています。
同じがんでも、その人のがん細胞に合わせた個別的な治療の時代になっています。
そのため、複雑(多剤併用)な治療内容を患者さまが選択する場面(意思決定)が多くなっています。
がん化学療法看護認定看護師は、最新の知識と技術を用いて、安全・確実な投与管理、その人の生活スタイルに合わせた副作用の対処方法、治療選択の意思決定支援、医師・薬剤師・病棟看護師や他職種と連携を取りながら看護を提供しています。
当院は、県内の地域がん診療連携病院であり、昨年の年間治療件数が2600件であり年々増加傾向にあります。今後も多岐にわたる治療内容と個別性に沿った、標準治療件数が増えることが予測されます。
外来治療で行われている呼吸器科・血液科・消化器科・乳腺外科・泌尿器科・婦人科・脳外科の抗がん薬・分子標的薬やリウマチなどの自己免疫疾患に使われる生物学的製剤の治療スケジュールの把握に努めています。
患者さまに、安心で安全な治療環境を提供できるように日々努めていきたいと思います。
医学用語 「病院の言葉をわかりやすく」
今回は施設入所中の患者さんの状態を説明する時などに、耳にする言葉について概説してみましょう。
ADL【エイディーエル】
寝起きや移動,トイレや入浴,食事,着替えといった,日常生活に必要な最低限の動作のことで,高齢化や障害の程度をはかる指標とされます。Aはアクティビティー(activity)で動作,DLはデイリーリビング(daily living)で日常生活の意味,直訳すれば,『日常生活のいろいろな動作』の意味となります。
誤嚥【ごえん】
食べたり飲んだりしようとしたときに,飲食物が誤って食道ではなく気管に入ってしまうことです。飲食物を飲み込む力が弱かったり,飲み込む神経の働きが悪かったりすると起こりやすくなります。飲食物だけでなく唾液(だえき)が気管に入る場合もあります。口から肺に細菌が入ることで病気を引き起こすきっかけにもなり、「誤嚥」によって引き起こされる肺炎を、「誤嚥性肺炎」と言います。
譫妄【せんもう】
病気や入院による環境の変化などで脳がうまく働かなくなり,興奮して,話す言葉やふるまいに一時的に混乱が見られる状態です。人の区別が付かなかったり,ないものが見えたり,ない音が聞こえたりすることがあります。また,ぼんやりしているかと思うと急に感情を高ぶらせることもあります。基本的に「認知症」とは異なる状態で、「意識障害」の一型です。
「病院の言葉を分かりやすくー工夫の提案」より
神経内科 湊
編集後記
今回、外科の大友先生から乳腺治療後の乳房再建の保健適応について、紹介されています。
乳がんや子宮頸がん、子宮内膜がんといった悪性腫瘍、特に若い方での症例が当院ではというより全国的に増加傾向にあります。病理診断という自分の仕事上、当院の各診療科から出される臓器をすべて診断しているため(今年3月まで一人で)、受診され、手術される病気の推移は肌で感じています。早期発見・早期治療という言葉はご存じだと思いますが、一方では“まさか自分が”という気持ちもどこかに。体調不良を感じた時はもちろんですが、検診も病気を見つける大事な方法です。家族のことを考えるなら、検診をお勧めします。自分も人間ドック受けなければ…
県立宮崎病院広報委員会 病理診断科 島尾義也