当院内科では、腎臓病の疑われる患者さんの確定診断のために経皮的腎生検を行っています。経皮的腎生検とは上の写真のように患者さんにうつぶせになっていただき、背中にエコーをあてて右の写真のように腎臓を確認し、局所麻酔をした後、バイオプティーガンと生検針を使って、安全に正確に腎臓の組織を採取します。
内科では主に9階で入院の上で検査をおこないます。検査入院なら火曜日に入院し、木曜日に腎生検をおこない、翌週の火曜日に退院します。昨年からエコーの機械もあたらしくなり、より安全になりました。
SARSについて
内科 姫路 大輔
●はじめに
発生からわずか半年の間に世界30カ国以上に広がり、8000人以上の患者と900人を越える犠牲者を出したSARS(severe acute
respiratory
syndrome:重症急性呼吸器症候群)。幸いにも日本で患者が発生することなく、7月には、最後の流行地域であった台湾での感染の収束が確認されました。しかし、今冬SARSが再び猛威をふるう可能性は高いと考えられ、十分な警戒が必要です。ここで、もう一度SARSとはどんな病気なのか、我々はどう対処すればよいのかを考えたいと思います(注1)。
●SARSとは
SARS関連コロナウイルスによって引き起こされる感染症と考えられています。感染経路としては、主に飛沫感染(患者から出る咳、くしゃみなどに含まれる飛沫粒子中のウイルスから感染を起こす経路)、接触感染(患者、あるいは周辺の物品に付着したウイルスにより感染を起こす経路)と考えられています。SARSは健康な成人に多く発症しており、15歳以下は比較的発症しにくいと言われています。発症までの潜伏期間は2~10日とされています。通常38度以上の高熱で発症し、寒気・頭痛、倦怠感、筋肉痛などの症状を伴います。しかし、これらの症状からはいわゆるかぜ症候群や、インフルエンザとの区別は困難です。その3-7日後に呼吸困難、空咳などの呼吸器症状が出てきます。胸部X線写真では多くの症例で肺炎像を認めます。10-20%の患者で、人口呼吸器が必要な状態となり、死亡率は、約10%と報告されています。SARSの診断は、現時点では表にお示しした通り、WHOの基準で行います(注2)。「疑い例」と「可能性例」がありますが、可能性例はほぼSARS患者と同じと考えて良いと思います。いろいろと条件がありますが、要点は、38度以上の発熱と咳、呼吸困難などの呼吸症状があり、SARS患者との接触の可能性がある場合、SARSが疑われると言うことです。治療法としては、ステロイドや、肝炎の治療で用いられる抗ウイルス薬(リバビリン)が有効であったとの報告もありますが、いまだ確立したものはありません。ワクチンもまだ開発されていません。
●この冬に向けて
それでは、SARSから身を守るためにはどうすればいいでしょうか?
- 栄養、休養を十分にとる。
- 外出後手洗いとうがいをしっかりと行う。
どれも当たり前の事ばかりですが、十分に危険を減らすことは出来ますし、たとえ感染し、発症したとしても重症化する可能性を減らせると考えられます。
また、われわれ医療従事者はより効果的なSARS対策を常に行う努力をしていますが、われわれの力だけではSARSに打ち勝つことは出来ません。読者の皆様にもお願いしたいことがあります。
- 常に新しい(そして正しい)情報を得る。
- SARSに感染した疑いがある、または感染したかどうか心配な場合は、まず保健所に連絡し、状況を説明した上で指示に従う。
特に(2)は重要です。われわれはSARSが疑われる患者が来院するとの連絡を受けますと、十分な受け入れ態勢を整えた上、診療を行います。何の連絡もなく直接病院に来られますと、待合室などで他の患者様、そして職員に院内感染を引き起こしてしまう可能性があります。自分を守るだけでなく、社会を守る事が、より効果的なSARS制圧につながる事をご理解頂きたいと思います。
注1: 本稿の内容は2003年9月26日時点でのものです。
注2: これは正確にはWHOが疫学調査、及び感染対策のために作成したもので、症例定義と呼ばれるものです。今後の調査研究の進展で修正される可能性があります。
SARSの症例定義
●SARS疑い例
(1)38度以上の急な発熱、及び、咳、呼吸困難等の呼吸器症状を示して受診した者のうち、
(2)次のいずれか1つ以上の条件を満たす者
- 発症前10日以内にSARSの「疑い例」・「可能性例」を看護若しくは介護していた者、同居していた者 又は気道分泌物若しくは体液に直接触れた者
- 発症前10日以内に、SARS発生が報告されている地域に居住、あるいは旅行した者
SARS可能性例
SARS疑い例のうち、次のいずれかの条件を満たす者
- 胸部レントゲン写真で肺炎、または呼吸窮迫症候群の所見を示す者
- SARS関連コロナウイルス検査(ウイルス分離、PCR、抗体)の1つ又はそれ以上で陽性となった者
WHO(世界保健機構)の症例定義(2003/5/1、3訂)より一部改変して引用
高血圧の食事指導について
栄養管理係 久野 明子
こんにちは。皆さんは日頃、食事の味付けには気を付けていらっしゃいますか?
私たち栄養管理係では平成15年4~7月にかけて、高血圧を伴って入院している患者さまに対して、食生活に関するアンケートや3種類のみそ汁(塩分農度:0.7%薄味、1.0%普通、1.3%濃味)の試飲調査を入院時・退院時・外来時の3回行いまして、患者さまの食生活や味覚に変化が出たかどうか、追跡調査を行いました。その結果、入院時に比べて退院時は薄味を好む傾向がでました(グラフ参照)。また、入院時に比べて外来時には「漬け物を食べる回数が減った」と答えた方が約半数増えておりました。さらに、血圧は入院時に比べて、退院時・外来時のどちらかにおいても低下しておりました。この血圧の変化は、降圧剤を服用している・していないに関わらずみられました。
アンケートにご協力して下さった患者さまの平均入院日数は19日間でした。わずか19日間薄味の病院食を摂って頂いただけで、これだけの結果が出た事に栄養管理係一同、驚いております。しかし、人間誰しも継続は難しいものです。高血圧があって日頃から薄味に気を付けている方も、時々栄養指導室に足を運んで、ぜひ栄養指導を受けてみませんか?(栄養指導は予約制になっております)
病院機能評価
脳神経外科 牧原 真治
昨今、医療事故のニュースがマスコミを賑わせない事はありません。これは、医療事故が増加していたと言うよりも、隠れていた事故が情報公開の流れを受けて、公表されるようになってきたのが原因とも考えられますが、一方で、しっかりとした医療事故対策も必要になってきたものと思われます。産業界では、品質管理というのは、当たり前の事ですが、医療の分野ではなかなかこうした考え方が受け入れられてきませんでした。医療の品質管理を評価し、ひいては医療の質を高めようと言う趣旨で立ち上げられたのが、病院機能評価機構ですが、今年度、県立宮崎病院でもこの評価を受ける事になりました。
病院機能評価は、書類審査と実地検査がありますが、実地検査は書類審査で回答した内容を確認するので、書類審査が評価の大部分を占める事になります。書類審査では、誇大な項目について、理想の病院はこうあるべきだと言う指針に、どれだけ近づいているのかを評価する事になります。別の見方をすれば、評価項目に上げられた事項に注目して改善すれば、自然に良い病院にできるはずなのです。認定される事が目的ではなく、認定作業を通して病院の改善をする事が目的なのです。
宮崎県内では、平成15年10月15日現在、評価機構で認定された公立病院は、宮崎大学医学部附属病院だけです。なかなか認定には紆余曲折があるものと予想されますが、がんばってゆきたいと思います。
評価項目の中に、喫煙についての指針が示されていますが、病院は禁煙に向けて患者様・職員を誘導すべきで、現段階では分煙を、将来的には全館禁煙を導入すべきだとしています。また、院内でたばこ販売をしていると、認定がおりませんので、現在設置されているたばこの自動販売機は早々に撤去される事になると思いますが、ご理解のほどよろしくお願いします。
参考:病院機能評価機構ホームページ
http://jcqhc.or.jp/