7月から9月まで麻酔科で研修させてもらっている研修医1年目の二宮です。4月から6月まで外科で研修をしていたため、手術室などで麻酔科の先生と接する機会は多かったのですが、実際研修すると今まで見えていなかったものがたくさんありました。
麻酔科での研修内容は術前診断、手術準備、麻酔が研修医の主な仕事です。術前診断とは患者さんの年齢、身長、体重はもちろん、患者さんから話を聞き、循環や呼吸状態、内服薬、既往歴などチェックし、行う手術を考慮し、先生と話し合いながら麻酔法を選択していきます。
そして手術前日から準備を行います。実施する麻酔によって準備する薬などが変わり、年齢などを考慮し患者さんそれぞれに合った道具を準備します。また、患者さんによっては、合併症などがあるため、手術中に起こり得る状態も考慮して準備していきます。
手術当日は点滴、挿管、脊椎注射など実際の手技を行います。手術中は循環や呼吸に注意しながら、体温や尿量など全身状態を見ながらおこなっていきます。無事に終わるまで緊張しっぱなしです。
麻酔科での研修は手術に追われての忙しい日々を送っていますが、それと同時に充実した研修をおこなえています。研修をおこない、およそ1か月が過ぎようとしています。先生方から丁寧に教えてもらい挿管などの多くの手技を経験でき、はじめのころよりは少しだけ、スムーズにできていると思います。
まだまだ勉強不足で、手術の流れや使用する薬の理解が必要だと感じています。また、術後疼痛に対しての勉強もこれからです。残りの期間で、できるだけ多くのことを吸収し、成長していけたらいいなと思います。
指導医からのメッセージ
麻酔科研修医への指導を行っている莫根です。当院の麻酔科医は4人の指導医と1人の専門医・1人の認定医の計6人に加え3ヶ月ローテートの初期研修医(1〜3人)で麻酔を行っています。手術症例数は年々増加傾向にあり、昨年度の手術件数は4272症例、その内3056例が麻酔科担当症例でした。
今年の4月からは後期研修医1人が当院麻酔科での研修を希望し、現在研修中です。麻酔件数は1人当たりにすると年間約500症例となり、ハードではありますが色んな症例を経験できると思います。寒くなると心臓血管外科の急患症例も増加してますます多忙とはなりますが、毎年、各科先生方の御協力と手術室スタッフ全員のチームワークで乗り切ってます。
二宮先生には7月から3ヶ月間の研修をして頂く予定です。先ずは末梢点滴ルート確保に始まり、人形を使っての挿管練習を規定数行って頂いた後、実際に挿管や脊椎麻酔・硬膜外麻酔などのブロックを指導医の指示の下に行って頂いております。夏休みで研修期間は短くはなりますが、当院は症例数が多い為にある程度の挿管・ブロックの技術は身に付くと思いますし、研修の後半には末梢だけでなく動脈や中心静脈ライン確保の経験までして頂けたらと考えております。
しかしながら、麻酔科の主な仕事はルート確保し挿管・ブロックしたら終わりでは無く、手術中の呼吸・循環管理・術後の鎮痛管理が最も重要で、さらに集中治療室での管理等も重要となります。その為には学生の頃に苦しんだ?解剖・薬理・生理学の知識が必要です。麻酔前日に行う術前回診で患者の状態(病歴・麻酔歴・合併症や内服薬の把握)を十分に把握し、麻酔法を決定してシミュレーションを行うと共に必要な機材・薬剤などの十分な準備をするのも麻酔です。
麻酔は後手後手に回るのが一番危険ですし、慌てて間違った対処をすると患者様を危険な状態に晒す事となるので、術前の麻酔準備が大変重要となります。麻酔中の呼吸・循環動態の変動があった場合、その原因を正確に察知・判断し、いかに適切に素早く対処するかが最も重要となります。初期研修に加えさらに後期研修もして頂けると、逐次変化する患者様の状態を理論付けて考え、判断できる力が自然と身に付き、麻酔の奥深さ・面白さをさらに理解して頂けるものと思っています。
二宮先生は非常に意欲的で、誰よりも朝早く出勤し麻酔の準備をしています。我々指導医にもその意欲と熱意が伝わり必然的に何か経験させようと思わせる位まじめに研修に取り組んでくれています。二宮先生は自治医大出身であり今後、地域医療に従事される事になると思います。歴代の自治医大出身の先生方と同様、僅か3ヶ月間の当院麻酔科での経験が今後必ず役立ち、更なるご活躍をされるものと確信しております。
地方の麻酔科医は減少しています。当院も症例数に対して麻酔科医数は十分ではありませんので、今まで研修医の先生方が満足いくような指導ができていたか甚だ疑問でありますが、今後、麻酔に興味を持っていただけるよう更なる指導を心がける事・指導時間を増やす為に効率良い麻酔が可能となるよう麻酔科外来を作る事・子育て中の女性医師等が働きやすい環境を整えていくべく努力している所です。それも麻酔科医が増えなければ、机上の空論に終わります。麻酔に興味のある先生方の連絡を心からお待ちしております。