気管支鏡検査のご依頼
当科では気管支鏡診断、治療に力を入れて取り組んでおり、最先端の診断機器を有しております。例年、200例以上の検査、治療を施行しております。
以下の検査、治療が可能ですので、お気軽にご相談、ご紹介ください。
(検査については新患日にご紹介いただくか、お急ぎの場合は姫路・田中までご相談ください。治療に関しては適応、準備などございますので、姫路まであらかじめご相談ください。)
- 通常の気管支鏡検査(生検、BALなど)
- 極細経気管支鏡(UTB)による検査(特に肺がんでapproach困難な症例など)
- 超音波気管支鏡(EBUS-GSによる生検診断、EBUS-TBNA、EUS-B-FNAによる縦隔リンパ節 診断など)気管支ステント、異物除去
- 気管支充填術(難治性気胸、有ろう性膿胸、喀血などに対するEWSを用いた治療)
気管支鏡検査について
気管支鏡について
気管支鏡(電子スコープまたはファイバースコープ)は、肺や気管支など呼吸器の病気にかかった患者さんにとって重要な器械で、気管支内を観察すると共に、組織や細胞を採取して正確な診断をつけたり(気管支鏡検査)、気管支が狭くなる病気の治療(気管支鏡下治療)に用いられます。
気管支鏡は直径3~6mmの細くて柔らかい管で、胸の奥深くにある肺につながる気管支の中を のぞき見る器械です。胃カメラと同じ構造ですが、胃カメラと比べると大変細くできています。
次のような症状、所見があった時に医師から気管支鏡検査を勧められます
- 痰に血液が混じった場合
- 原因不明の咳が続く場合
- 胸部レントゲン写真やCT写真で肺に異常陰影がみられ、肺癌や感染症、炎症などが疑われる場合
- 喀痰検査で癌細胞を疑う所見がみられる場合
- その他、肺、気管支に異常が疑われる場合
麻酔について
あらかじめ、麻酔薬を投与して不快感を取り除くようにします。ほとんどの場合鎮静剤の注射をおこなって、ほとんど眠った状態で楽に検査が受けられるようにしています。(患者さんの状態によっては、鎮静が使え ない場合もあります。)
超音波気管支鏡(EBUS-GS、極細径気管支境、EBUS-TBNA、EUS-B-FNA)
気管支腔内超音波気管支鏡検査
肺末梢病変に対するEBUSを用いた診断
肺末梢病変の診断ではX線透視下に生検が行われてきましたが、透視で位置確認の困難な病変の場合、正確な診断ができませんでした。本法は、プローブを病変に誘導し、EBUSで病変を描出し位置を確認する方法です。
プローブにガイドシースをかぶせて病変まで誘導し、生検鉗子を挿入する手技もあり、EBUS-GS(guide-sheath)法と呼ばれます。これにCT画像から作成したナビゲーション画像を用いて、検査をおこなうことを標準検査としています(EBUS-GS-VBN法)。
これまで700例以上の症例を積み重ねており、高い診断率と安全性を確認しております。
極細径気管支鏡
先端部外径3mmの極細径気管支鏡も導入しています。チャンネル径が1.7mmであり、超音波プローブを使用することが出来ます。ナビゲーションと併用することで、従来の気管支鏡では到達できない部位まで到達することが可能で、診断率が向上することが報告されています。
ナビゲーション
これまでは肺末梢病変まで気管支鏡を到達させるために、CTで気管支の走行を確認して、検査を行ってきました。現在、新しいアプローチとして、ナビゲーション(virtual bronchoscopic navigation:VBN)が用いられるようになり良好な成績が報告されています。VBNは、カーナビのように末梢肺病変へ到達する気管支のルートを仮想気管支鏡画像で示し、気管支鏡を誘導する方法です。当院ではEBUSとナビゲーションを併用した検査法(VBN-EBUS)を早くより導入し、標準検査としています。診断率向上と検査時間の短縮による患者さんの負担の軽減に努めています。
気管・気管支周囲リンパ節の描出・穿刺(EBUS-TBNA)
コンベックス型超音波プローブが先端に装着された超音波気管支鏡が開発され気管・気管支周囲の情報を得ることができるようになりました。本法ではリンパ節を描出しながら穿刺を行うため、診断率、安全性が向上しました。本法は肺がん診断のみならず、サルコイドーシスや悪性リンパ腫などの診断にも有用です。
これまでに多くの症例を積み重ねてきており、県内各所から多くの患者さんの検査依頼を頂いております。最近では、本超音波気管支鏡を経食道的に挿入しておこなうEUS-B-FNA(経食道的気管支鏡下穿刺吸引生検法;endoscopic ultrasound with bronchoscope-guided fine needle aspiration)も導入し、検査負担の軽減、成績の向上を目指しています。
また患者さんの負担軽減、穿刺回数の削減、診断率の向上のため、検査科、病理診断科のご協力のもと迅速細胞(ROSE : Rapid On-Site cytological Evaluation)を併用した検査をおこなっています。
EBUS-GSとNavigationを用いた気管支鏡検査
肺癌が疑われる病変の胸部X線写真、CT写真。病変は非常に淡く、わかりにくい場所にあります。
上がCTから作成したナビゲーションの画像です。この画像を参考に、検査を行います。
下が実際の気管支鏡画像で、ナビゲーションの画像と良く一致しています。
左上がEBUS画像です。プローブ周囲に点状エコーを認め、病変に到達したことがわかります。
その場所から生検を行い、肺癌の診断がつきました。
極細径気管支鏡とNavigationを用いた気管支鏡検査
左より通常径、細径、極細径スコープです。先端が非常に細くなっています
(画像提供:オリンパス)
上は細径スコープによる検査で、病変部位まで到達できていません。
下は極細径スコープによる検査で、病変部位に到達することができ、腫瘍のエコー像を確認できます。
EBUS-TBNA
EBUS-TBNA。気管支鏡の先端に超音波プローブがついています。左下のCTで見られるように縦隔リンパ節が腫れている患者さんの診断にきわめて有用です。右下は内視鏡と超音波の画像ですが、このようにリンパ節を直接見ながら針で穿刺し、生検します。(内視鏡本体の画像はオリンパス社HPより)
EUS-B-FNA
EUS-B-FNA(経食道的気管支鏡下穿刺吸引生検法;endoscopic ultrasound with bronchoscope-guided fine needle aspiration)EBUS-TBNA に用いる超音波気管支鏡とEUS-FNAに用いる超音波内視鏡は、大きさや性能は異なるものの、その構造 は類似している。 EUS-B-FNAは超音波気管支鏡を用いて、EUS-FNAと同じように経食道的に縦隔病変を生検する方法である。 経気管支的 、経食道的 いずれのルートでも 穿刺可能な病変の場合 、EUS-B-FNA群で局所麻酔薬や鎮静薬の量が少量で、検査時間が短く、酸素飽和度の低下、咳嗽の頻度が低いことが報告されている。
気管支インターベンション
悪性腫瘍による気道狭窄に対する硬性鏡を用いたステント留置:肺がんなどの悪性腫瘍による気道狭窄に対する気管支鏡治療は、呼吸困難を訴える患者の症状を改善しQOLを向上させます。確実な気道確保のため、全身麻酔下にて硬性鏡を挿入、マイクロ波凝固法(MWC)、アルゴンプラズマ凝固法(APC)で腫瘍を焼灼、気道を確保した上で、シリコン製や金属製のステントを留置します。上がシリコンステント、下がAEROステント。
クライオ生検・治療
クライオ生検(TBLC)は気管支鏡チャネルを通したクライオプローブを用いて、肺組織を凍結させて採取する、あるいは腫瘍を摘出する、わが国では2017年3月に薬事承認を受けた新しい技術です。当院では2022年より導入しており、現在は主として異物除去、気管支インターベンションでの腫瘍摘出に使用しています。今後、びまん性肺疾患でのクライオ生検を開始する予定です。
原理としては、圧縮されたCO2がプローブに流れることで先端が冷凍され、冷凍したプローブを接触させることで肺組織を凍結させ、そのまま引きちぎることで検体・組織を採取します。採取できる組織の大きさは5-8mm程度で、従来の生検鉗子に比べて採取できる検体は大きく、質も良く、病気の診断に有用とされています。
診断率が高まる分、気道・気管内出血や気胸の合併は高くなると報告されており、検査・治療は鎮静剤・鎮静剤を用いて静脈麻酔下で、または全身麻酔下で、気管に挿管チューブを挿入して行います。
EWSによる気管支充填術
気管支充填術による各種呼吸器疾患の治療:気管支充填術は、気管支鏡を用いて充填剤を気管支に詰めて気管支を閉塞することで種々の病態を改善する治療です。充填剤としてシリコン製のEWS(Endobronchial Watanabe Spigot)の有効性が数多く報告されています。術後の気管支瘻や、難治性気胸、有瘻性膿胸などに有効です。また、喀血に対する有効性も近年報告されており、当院でも学会・論文報告しております。