宮崎県立宮崎病院救命救急科では、下記の臨床研究を実施しています。皆様には本研究の趣旨をご理解頂き、ご協力を賜りますようお願い申し上げます。
研究課題名:多施設合同レジストリを用いた外来部門におけるRapid Response Systemに関する観察研究
1. 研究の概要
院内急変対応として豪州で1995年に院内迅速対応システムであるRapid Response
System(RRS)の報告がなされ、米国では2000年ごろに急速に認識が高まってきました。米国医学研究所 (Institute of
Medicine:
IOM)が有害事象の半数強は、回避可能なもので、年間で10万人弱の死亡を回避することができると報告をしています。その報告に基づき、2005年から2006年の18カ月にかけて、米国医療の質改善研究所(IHI)により率先された国家プロジェクトにより、医療の質を劇的に向上させてきました。日本でも医療安全全国共同行動の2008年の立ち上げにより啓蒙活動が積極的に行われてきたおかげで、行動目標項目6であるRRSのコンセプトは普及しつつあります。
院外での心停止の蘇生率の向上が脚光を浴びている中、院内での心停止に伴う生存率が改善していないという事実は、あまり注目されていません。本邦でも蘇生教育が,盛んに行われるようになってきたためか、蘇生教育を行うことで、蘇生後の死亡率は低下し、院内の安全管理は改善したように錯覚されています。しかしながら、米国で65歳以上の患者の1992年から2005年までの13年間分の院内心停止の成績を調査したところ、院内で心肺蘇生が行われても,13年間で生存率が改善していないことが報告されています。心停止した後の医療コストは急性期にも慢性期にも必要であることを考えると、心停止をさせない取り組みをすることが医療コストの余計な支出を防ぐことにもつながります。その一環として、米国では、RRSの病院への導入を推奨しており、同様の理由で本邦でもRRSの導入が始まっています。
2. 目的
欧米ではRRSの導入効果に関する有効性に関する報告は、RRSの導入によって院内心停止発生数の減少、心停止症例の死亡率の減少、有害事象発生率の減少などが数多く報告されています。しかしながら、オーストラリアにおける多施設無作為化試験では、RRSの有用性が証明されない結果が報告され、さらにメタアナリシスにおいて死亡率の低下がRRSに起因するか不明であるという報告もされています。このような世界情勢の中で、徐々にRRSが浸透しつつある本邦でもRRSに関するデータが収集され、日本独自のエビデンスを確立していく研究が始まっていますが、発展途上の段階にあります。
RRSに関する研究のほとんどが入院患者を対象としており、RRSは入院患者における院内心停止をはじめとする重大な有害事象を早期に発見し、早期介入につなげる医療安全システムとして知られるにようになりましたが、外来部門におけるRRSのエビデンスを示している研究は少ないです。病院内では入院患者と外来患者の区別のつきにくい場所もあり、RRSには病院敷地内どこからコールされても出動し対応することが求められています。
当院でも2015年5月から出動範囲として外来部門を含めたRRSを導入しました。本研究は、当院でのデータを含めた多施設合同レジストリのデータを解析することにより外来部門におけるRRSの有効性と問題点を検討し、RRSの更なる普及を推進することを目的としています。
3. 研究実施予定期間
この研究は倫理委員会承認後から2023年7月31日まで行われます。
4. 対象者
2014年1月1日から2018年1月31日に各施設でRRSが起動されオンラインレジストリに登録された方が対象となります。
5. 方法
対象となる方の多施設合同レジストリのデータから以下の観察項目のデータを収集させて頂きます。これらの情報をもとに外来部門におけるRRSの有用性を検討します。
観察項目
- 年齢、性別、診療科 (年齢、性別については連結可能匿名化を行うため各施設でのみ入力する)
- 病棟、発生場所、発生時間
- 要請情報(要請基準)
- 介入
- 要請時情報(要請時刻、到着時刻、終了時間)、コードステイタス、チーム形態
- 院内救急発生状況、簡単な背景、現場での評価、推奨と介入
- 現着時情報(体温、血圧、脈拍、呼吸数、酸素飽和度、意識レベル)
- 異変の予兆(RRT到着24時間以内の異常なバイタルサインの有無、異常から要請までの時間)
- 転帰先の妥当性、転科の有無
- 急変対応における問題点(覚知、起動、METRRT診療、移送、受け入れ)
- 医療安全対策(RRS起動後のDNAR,RRSが起動されていなかった時の致死的な可能性)
- 症例はpreventableか?インシデントか?アクシデントか?
- 患者転帰
6. 費用負担
この研究を行うにあたり、対象となる方が新たに費用を負担することは一切ありません。
7. 利益および不利益
この研究にご参加いただいた場合の利益・不利益はありません。参加を拒否された場合でも同様です。
8. 個人情報の保護
研究にあたっては、対象となる方の個人を同定できる情報は一切使用致しません。
9. 研究に関する情報開示について
ご希望があれば、研究計画および研究方法についての資料を閲覧することができます。ご希望がある場合は、下記連絡先へ遠慮なく申し出て下さい。ただし、研究の独創性確保に支障のない範囲内で情報開示を行います。
10. 研究資金および利益相反について
この研究に関する経費は、実施責任者が所属する診療科の研究費で賄われます。なお、本研究の実施責任者と分担研究者は本研究に関わる企業および団体等からの経済的な利益の提供は受けていないため、利益相反注1)はありません。
- 臨床研究における利益相反とは、研究者が当該臨床研究に関わる企業および団体等から経済的な利益(謝金、研究費、株式等)の提供を受け、その利益の存在により臨床研究の結果に影響を及ぼす可能性がある状況のことをいいます。
11. 研究成果の公表
この研究で得られた研究成果を学会や医学雑誌等において発表します。この場合でも個人を特定できる情報は一切利用しません。
12. 参加拒否したい場合の連絡先
この研究に参加したくない(自分のデータを使ってほしくない)方は下記連絡先へ遠慮なく申し出て下さい。
13. 疑問、質問あるいは苦情があった場合の連絡先
この研究に関して疑問、質問あるいは苦情があった場合は下記連絡先へ連絡をお願い致します。
宮崎県立宮崎病院 救命救急科
医長 青山剛士
電話:0985-24-4181
FAX:0985-28-1881