宮崎県立宮崎病院

心臓血管外科の紹介

心臓血管外科の紹介

心臓血管外科は、下記の認定施設です。

  • 日本外科学会外科専門医制度修練指定施設
  • 心臓血管外科専門医認定機構基幹施設
  • 日本ステントグラフト実施基準管理委員会実施施設(胸部・腹部大動脈瘤)
  • 下肢静脈瘤血管内焼灼術実施・管理委員会実施施設

はじめに

 当科は現在、年間180〜190例の心拍動下冠動脈バイパス術(OPCAB)や人工心肺を必要とする虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)、心臓弁膜症、胸部大血管疾患(急性・慢性大動脈解離、胸部大動脈瘤)を含む開心術、40例前後の胸部・腹部大動脈瘤および大動脈解離に対するステント術、80例前後の腹部大動脈瘤(開腹)および末梢血管手術(下肢バイパス術や下肢静脈瘤)を行っております。また高リスク症例も多く扱っている施設で、ここ最近6年で100例の透析患者の開心術手術も行っており良好な成績を得ております。平成30年4月1日から当科の前任者に代わり、上野隆幸 医長が赴任しました。前任地の鹿児島医療センター(鹿児島市)で特に低侵襲心臓手術である右小肋間開胸による僧帽弁形成術やまだ、九州でも数施設でしか施行されていなく、宮崎県内ではまだ行われていない人工弁置換を要しない、自己心膜を用いた大動脈弁再建術を手がけていきました。以下に従来から一般的に行われている手術(弁置換、弁形成、人工血管置換、ステントグラフト内挿術、下肢バイパス、下肢静脈瘤治療など)は当然ながら、当科のスタッフ一同で今後、力をあげて扱っていく疾患とその手術について一部、ご紹介します。

心臓弁膜症

 心臓弁膜症の一つである僧帽弁閉鎖不全症には低侵襲心臓手術(Minimally Invasive Cardiac Surgery: MICS)であります右小肋間開胸による僧帽弁形成術(MICS-MVP)があります。前任地で平成26年4月の導入以降、平成30年3月の4年間に、30例(全僧帽弁形成の25%)に施行してきました。この分野に関しても宮崎県内でほとんど他施設では行われておらず、今後は当科がその最先端を走っていきたいと存じます。従来の25~30 cm近い胸の真ん中を切開する胸骨正中切開に比べて皮膚切開8 cmという右小肋間開胸切開で低侵襲手術することで、美容的にも胸骨感染のリスクもないことから患者さんには大変好評です。さらに早期回復、早期退院、早期社会復帰を得ることができております。しかし、手技の難度は高くなるので適応は慎重に判断し、手術の質を落とさないように細心の注意を払っています。今後は宮崎県内でその患者適応をはかり、その症例数を伸ばしていく所存であります(図1)。

 また、日本だけならず、世界でもその第一人者である東邦大学医療センター大橋病院心臓血管外科 尾崎重之教授が2007年に開発開始した重症大動脈弁狭窄症や大動脈弁閉鎖不全症などの大動脈弁疾患の患者に対しての自己心膜を用いた大動脈弁再建術(AV Neo-cuspidization)を行い、すでに10年のこれまでの長期成績も十分に満足いく結果をだしております。これは今まで人工弁置換を受けていた患者にとっては人工弁置換を要しない、術後抗凝固治療が不要の画期的な手術手技であり、患者には大変メリットの大きい手術であります。前任地でも平成29年5月に同手技を導入して以降、平成30年3月までに5例をすでに手がけており、術後の大動脈弁逆流もなく、良好な成績を得ています。今後は宮崎県内でその適応患者を増やして、症例数を重ねていき、宮崎県内の患者にその恩恵を受けていただけるようにしていく所存であります(図2)。

 また、当院でも現在まで従来通り行っております大動脈弁輪拡張症(Annuloaortic ectasia:AAE)や大動脈基部拡大に対する手術として従来の人工弁を使用した大動脈基部置換術(Bentall operation)に代わる術式として、自己弁尖を温存して大動脈基部を置換する術式が行われています。この術式は、弁輪上から人工血管置換を行い、バルサルバ洞や弁輪部の運動制限の少ないRemodeling法と弁下部から弁輪部を覆うように人工血管置換術を行い、大動脈弁輪拡張に対して縫縮効果が望まれるReimplantation法が挙げられます。当院でもAAEや aortic root aneurysmに合併した大動脈弁閉鎖不全症(Aortic regurgitation: AR)に対して従来、人工弁と人工血管のcomposite graftを用いた大動脈基部置換(Bentall手術)を行っており、その手術成績も良好でした。近年は自己大動脈弁温存手術(valve-sparing operation),特にReimplantation (David手術)が注目されており、当科でも現在まで適応のある症例に対して積極的にReimplantation (David Ⅴ)手術に挑戦しています。患者にとっては人工弁フリー、ワーファリンフリーの生活が術後待っており、患者のQOL向上、さらに人工弁関連合併症の回避、予後の改善に貢献する手術であると認識しています。現在まで大動脈弁逆流制御の点でも良好な成績をあげています(図3)。

 しかし、当院手術室にハイブリッド手術室(X線透視を兼ね備えたクリーン室)が未だないため、ハイリスク高齢者大動脈弁狭窄症の治療に対する経カテーテル的大動脈弁置換術(Transcatheter aortic valve implantation: TAVI)(図4)が施行できませんが、今後、当院に来院しましたハイリスク高齢者大動脈弁狭窄症患者様に対してはちゃんとそういった施設へ紹介しておりますので安心して診療していただけると思います。

胸部、腹部大血管・大動脈瘤疾患

 従来の開胸や開腹による人工血管置換術はもとより、現在は開胸や開腹を要しない胸部大動脈瘤に対するステントグラフト挿入術(Thoracic endovascular aortic repair: TEVAR)、腹部大動脈瘤に対するステントグラフト挿入術(Endovascular aortic repair: EVAR)をすでに当院では当院放射線科を中心に当科とも連携して始めており、現在はその適応を拡大しています。特に胸部大動脈瘤に対するステントグラフト挿入術の登場により従来の左開胸下の人工血管置換術症例は減少していますが、呼吸機能障害などの多くのリスクを持つ患者さんに対しては大変有用な治療手段となっています。血管内治療の登場で胸部大動脈瘤、腹部大動脈瘤症例は全国的にみても増加の一途をたどっていますが、この領域に関しても手技の安全性も高まりさらに増加していくものと思われます(図5)。

虚血性心疾患・冠動脈硬化性疾患

 狭心症、心筋梗塞による冠動脈バイパス術は経カテーテル治療(Percutaneous coronary intervention: PCI)の飛躍的な進歩、発達により減少しています。しかし、減少した中でさらにその治療対象患者は多くの合併症を有したますますハイリスク患者となってきております。欧米に比較して心拍動下冠動脈バイパス術(Off pump coronary arterial bypass grafting: OPCAB)が盛んに施行されてきた本邦ではありますが、ここに来て改めて人工心肺使用下の冠動脈バイパス術(Conventional coronary arterial bypass grafting: CCAB)の長期成績が見直されてきております。今後はそのようなハイリスク患者でも治療成績を落とすことなく、質の向上を目指し、静脈グラフトより長期開存性が得られる動脈グラフトを多用した術式を選択して、その有用性と意義を高めていくことになると思います(図6)。

末梢血管疾患(閉塞性動脈硬化症)

 閉塞性動脈硬化症(Arterio-sclerosis Obliterans:ASO)は、動脈硬化が基盤となって粥腫形成、血栓ができ血管が詰まるという発症経過を示します。特にASOを有する患者における心筋虚血有病率は55%にも及び、重症のASO患者の 生命予後は不良であるといわれています。ASOに糖尿病が合併すると心血管死 がさらに増加することも分かってきました。これまでシロスタゾールやスタチンなどの内服に加え、腸骨動脈領域を中心に末梢動脈インターペンション(PTA)が行われております。さらには最新のステント進歩により大腿動脈以下の PTA 治療も増えてきております。PTAとは冠動脈と同じように、骨盤部や下肢の末梢血管の動脈硬化による狭窄・閉塞部を細いカテーテルに装着したバルーン(風船)やステント(金属の筒状のもの)を使用して、病変部を拡張させることにより血流を改善させる治療です。そのため、外科的に人工血管や自家静脈を使用した下肢バイパス術の症例数は減少の一途ですが、PTA不可能な症例にはまだまだ必要で有効な手段であります(図7)。

下肢静脈瘤

 下肢静脈瘤は以前の下肢静脈抜去術(ストリッピング)に変わり、小さな傷穴一つで済む血管内焼灼術が主流となってきています。従来の下肢静脈抜去術(ストリッピング)はもとより当院もすでに下肢静脈瘤血管内焼灼術実施・管理委員会が認定する実施施設となっており、積極的に高周波(ラジオ波)を用いた下肢静脈瘤血管内焼灼術(radiofrequency ablation: RFA)を行っております(図8)。ストリッピングや従来のレーザー焼灼術(endovenous laser ablation: EVLA)に比べ て、RFAは術後疼痛や内出血が抑えられるのが最大の特徴で、下肢静脈瘤の多くが血管内治療の適応となり標準術式となっております。

おわりに

当科としての基本理念として

  • いかなる救急も断らない。
  • 患者様にとって何が最適な手術治療なのかを考え、患者様に提案し行う。
  • 従来の手術治療はもちろんのこと、患者様にメリットのある統計的に裏付けられた他施設で行われていない新しいより良い手術治療を提供する。

 当院では施行施設となっていない経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVIまたはTAVR)や人工心臓(LVAD)などが適当と思われる症例ではちゃんとそういった施設へ紹介しておりますので安心して診療していただけると思います。

 通常外来は月曜日(初診・再診)と水曜日(初診・再診)になっておりますが、急患の場合はその限りではなくできるだけいつでも応対しますのでご相談下さい。心臓血管外科外来担当ナースは久保田で、当科の窓口となっております。

図1

a) 低侵襲僧帽弁手術(右小肋間開胸による)

b) 右小肋間開胸創部写真(8cm切開)

c) 術野写真(写真左側が頭側)

図2

a) 自己心膜を使用した大動脈弁再建術 (AV Neo-cuspidization)

b) 自己心膜大動脈弁再建後の写真(写真右側が頭側)


自己心膜で再建した大動脈弁が風車様の形態となっている。

図3

a) 自己大動脈弁温存基部置換術

b) 人工弁を使用した大動脈基部置換術(Bentall手術)

図4

図5

a) ステントグラフト内挿術

b) オープンステントグラフト内挿と併用した人工血管置換術

図6

a) 両側内胸動脈グラフトを用いた心拍動下冠動脈バイパス術後3D-CT

図7

下肢バイパス術

図8

a) 下肢静脈瘤

b) 血管内高周波(ラジオ波)焼灼術

お問い合わせ:電話0985-24-4181
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